周易は古代中国で生まれた占いで、陰と陽を組み合わせた図象を使用して物事の是非や吉凶を占う占術です。周易には菜箸のような棒をシャカシャカと動かす手順があり、一般的には占い内容よりもその独特な占いスタイルの方が有名かもしれませんね。周易は易占いの中で最も古い占術とされ、特に明確な答えを知りたい際に最適な占いです。
今回は、そんな周易の特徴や占い方法などについて解説します。
周易とは?断易との違いは?
周易とは「易経」と呼ばれる古代中国の書物に掲載されている占いのことで、易卦と呼ばれる図象や卦辞、爻辞などを元に物事を占う占術です。
歴史
易経は伝説では周王時代に記されたといわれていますが、実際に成立したのは漢時代とされています。「易」の意味は諸説あり、日月や変化、蜥蜴などを表すほか、「周く(あまねく)易(変化)を説く」という意味があるともいわれています。
断易との違い
「易」がつく占いといえば「易経」や「断易(五行易)」がありますが周易とは似て非なる特徴があります。易経は周易の本来の文に十翼という文を追加したもので、断易は易卦を構成する爻という要素に十二支を割り当て、それらの陰陽五行の強弱を元に占う占術です。
周易で占えるもの
周易は物事を判断したり吉凶を占ったりすることを得意とした占いです。特に、迷いがある際や物事の是非などを知りたい際に役立ってくれるでしょう。また、はっきりとした答えを示してくれる占いですので、白黒つけたいときやYes/Noを知りたい場合にもおすすめです。その反面、抽象的・曖昧な事柄を占うことには適していませんので、周易で占う際はできるだけ明瞭で具体的な質問を用意することがポイントです。
周易の特徴
周易の主な特徴は「易卦」と呼ばれる図象を使用する点です。
易卦は陰陽を持つ「爻」を重ねたもので、「陰は「–」、陽は「-」の記号で示されます。この2つの記号を3つ組み合わせて8種類に分けたものを「八卦」といい、八卦をさらに2乗して64パターンに細分化したものを「六十四卦」と呼びます。
八卦には天や地、火や水といった自然に由来する解釈が付けられ、六十四卦にもそれぞれに意味があります。以下にその概要を記しますが、ここでは本来の図像ではなく漢字表記されたものを使用します。
八卦の種類と主な解釈
乾(天) | 晴天、父性的、剛健さ |
兌(沢) | 小川、少女的、曇り空 |
離(火) | 明確、明るい、美人 |
震(雷) | 騒々しい、若者 |
巽(風) | 柔軟、揺れ動く、商人 |
坎(水) | 苦悩、陥る、病人 |
艮(山) | 不動、留まる、頑固 |
坤(地) | 静か、母性的、従順 |
六十四卦と主な意味・解釈
1乾為天 | 天、男性的、創造 |
2坤為地 | 大地、女性的、穏やかな態度 |
3水雷屯 | 生みの苦悩、先を急がない |
4山水蒙 | 未熟、経験不足 |
5水天需 | 時期を待つ |
6天水訟 | 対立、訴訟、妨害 |
7地水師 | 軍隊、戦 |
8水地比 | 交流、親睦 |
9風天小畜 | 小休止、雨が降りそうな雲 |
10天沢履 | 危険、注意 |
11地天泰 | 順調、平和 |
12天地否 | 道が塞がる、停滞 |
13天火同人 | 同志と集う、協力 |
14火天大有 | 大有、成功 |
15地山謙 | 公平、謙虚 |
16雷地豫 | 喜ぶ、春きたる |
17沢雷随 | 流れに身を任せる、従う |
18山風蠱 | 虫、腐敗 |
19地沢臨 | 沢に臨む、スタート |
20風地観 | 熟察する |
21火雷噬嗑 | 噛み割る |
22山火賁 | 装飾する |
23山地剥 | 剥落 |
24地雷復 | 復活、正しい道に帰る |
25天雷无妄 | 無心、無我 |
26山天大畜 | 大きな停滞 |
27山雷頤 | 養う、食べ物 |
28沢風大過 | 負担、負荷 |
29坎為水 | 困難が続く |
30離為火 | 日が照る、太陽 |
31沢山咸 | 夫婦愛、共鳴 |
32雷風恒 | 持続、維持 |
33天山遯 | 手を引く、撤退 |
34雷天大壮 | 大壮、大いなる力 |
35火地晋 | 太陽が昇る、前進 |
36地火明夷 | 太陽が隠れる、不運 |
37風火家人 | 家族、家庭円満 |
38火沢睽 | 不和、衝突 |
39水山蹇 | 困難、障害 |
40雷水解 | 雪解け、解決 |
41山沢損 | 滅る、損をして利を見る |
42風雷益 | 増大、増加 |
43沢天夬 | 決断する |
44天風姤 | 出会い、強い女性 |
45沢地萃 | 集う |
46地風升 | 発展、昇る |
47沢水困 | 困苦、沈黙を守る |
48水風井 | 井戸 |
49沢火革 | 改革 |
50火風鼎 | 安定、調整 |
51震為雷 | 雷鳴 |
52艮為山 | 停滞、止める |
53風山漸 | ゆっくりとした前進 |
54雷沢帰妹 | 嫁ぐ、結婚 |
55雷火豊 | 雷鳴・雷光、豊富 |
56火山旅 | 旅、小さな成就 |
57巽為風 | 従う、柔軟 |
58兌為沢 | 歓喜、喜び |
59風水渙 | 離散、解散 |
60水沢節 | 節度 |
61風沢中孚 | 誠心誠意 |
62雷山小過 | 少事が吉 |
63水火既済 | 達成、完成 |
64火水未済 | 未完 |
六十四卦は「上経」と「下経」に分けられ、上経は上記の1~30までの卦、下経は31~64までの卦になります。この順番は易経に記されている順序で、自然界や宇宙の法則などを元に定められた順だといわれています。なお、上記の六十四卦の名称は日本独自の呼び方で、覚えやすいようにアレンジされたものです。
周易占い講座:やり方のコツは?
周易占いは自分で行うことも可能です。少々複雑な点もありますが、手順と六十四卦の仕組みを覚えてチャレンジしてみましょう。なお、周易の占い方は国や流派によって違いがありますが、ここでは一般的に紹介されている方法についてご紹介します。
必要なアイテム
アイテムはネットショップなどで購入することができます。また、筮竹の他にサイコロやコインを使用する方法もありますが、基本的には筮竹を使用します。
筮竹
長さ40cm程度の竹製の細い棒です。総数は50本です。
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筮竹・1尺3寸(39cm)
税込価格:4,536円
算木・筮竹台セット
長さ10cmほどの四角い木片で、陰陽を表すために使用します。6本一組になっています。筮筒は、筮竹を立てておくために使用します。
画像元:Amazon
算木・筮竹台セット
税込価格:3,078円
占いのやり方
周易の占い方法には本筮法、中筮法、略筮法の3種があります。本筮法が本来の周易の占い方で、中筮法は本筮法を簡素にしたもの、略筮法はさらに簡素化した方法となります。ここでは最も簡略化された略筮法での占い手順について解説します。
略筮法の手順
手順1.質問を決める
占う項目や質問を決めるます。明確で分かりやすい内容のものを準備しましょう。
手順2.筮竹から1本抜き取る
50本の筮竹から1本抜き取り、筮筒に入れておきます。この1本は太極と呼ばれますが占いには使用しません。
手順3.二つの束に分ける
残った49本を両手で持ち、質問を念じながら2つの束に分けます。左手に持った束を天策、右手に持った束を地策と呼びます。
手順4.人策を抜き取る
地策(右手)の束のみを机の上に置き、置いた束の中から1本だけ抜き取って左手の小指と薬指に挟みます。この1本は人策と呼ばれます。
手順5.天策を数える
天策(左手)の本数を8本ずつ数え置いていきます。残りの本数が人策を含めて8本以内になったら手を止めます。
手順6.八卦をチェックする
手順5で残った本数から該当する八卦をチェックします。ここで確認する八卦のことを下卦(内卦)と呼びます。
残った本数 | 該当する八卦 |
1本 | 乾(天) |
2本 | 兌(沢) |
3本 | 離(火) |
4本 | 震(雷) |
5本 | 巽(風) |
6本 | 坎(水) |
7本 | 艮(山) |
8本 | 坤(地) |
手順7.上卦(外卦)を割り出す
次に上卦(外卦)を割り出します。手順は下卦と同じで、最後に残った本数から八卦を導き出します。上下2つの八卦を組み合わせることで64通りのパターンが生まれ、六十四卦となります。八卦と六十四卦の組み合わせは次の通りです。
八卦と六十四卦の組み合わせ表
上卦→ ↓下卦 |
乾(天) | 兌(沢) | 離(火) | 震(雷) | 巽(風) | 坎(水) | 艮(山) | 坤(地) |
乾(天) | 1.乾為天 | 43.沢天夬 | 14.火天大有 | 34.雷天大壮 | 9.風天小畜 | 5.水天需 | 26.山天大畜 | 11.地天泰 |
兌(沢) | 10.天沢履 | 58.兌為沢 | 38.火沢睽 | 54.雷沢帰妹 | 61.風沢中孚 | 60.水沢節 | 41.山沢損 | 19.地沢臨 |
離(火) | 13.天火同人 | 49.沢火革 | 30.離為火 | 55.雷火豊 | 37.風火家人 | 63.水火既済 | 22.山火賁 | 36.地火明夷 |
震(雷) | 25.天雷无妄 | 17.沢雷随 | 21.火雷噬嗑 | 51.震為雷 | 42.風雷益 | 3.水雷屯 | 27.山雷頤 | 24.地雷復 |
巽(風) | 44.天風姤 | 28.沢風大過 | 50.火風鼎 | 32.雷風恒 | 57.巽為風 | 48.水風井 | 18.山風蠱 | 46.地風升 |
坎(水) | 6.天水訟 | 47.沢水困 | 64.火水未済 | 40.雷水解 | 59.風水渙 | 29.坎為水 | 4.山水蒙 | 7.地水師 |
艮(山) | 33.天山遯 | 31.沢山咸 | 56.火山旅 | 62.雷山小過 | 53.風山漸 | 39.水山蹇 | 52.艮為山 | 15.地山謙 |
坤(地) | 12.天地否 | 45.沢地萃 | 35.火地晋 | 16.雷地予 | 20.風地観 | 8.水地比 | 23.山地剥 | 2.坤為地 |
※上記の表は左向きで読みますが、右向きで記されている表もあります。
六十四卦には卦辞という解説のような文が付いていますので、結果を読む際の参考にしましょう。
手順8.之卦を導き出す
六十四卦が分かったら次は之卦と呼ばれる要素を導き出します。之卦とは爻の位置を表すもので、物事の状況や成り行き・アドバイスなどを示す項目となります。この項目のことを爻辞と呼びます。筮竹を束ね直し、6本ずつ数えて残りが6本以内になったら手を止めます。残った本数で結果をみます。
残った本数 | 爻の名称 |
1本 | 初爻 |
2本 | 二爻 |
3本 | 三爻 |
4本 | 四爻 |
5本 | 五爻 |
6本 | 上爻 |
手順9.結果を読み取る
導き出した六十四卦の卦辞、および爻辞の内容を元に結果を読み取ります。
周易を行う上での注意点
周易には「笑って問えば笑って答える」という言葉があり、遊び半分や半信半疑な気持ちで占うと正確な結果が出ないとされています。周易で占う際は雑念を取り除き、真摯な気持ちで臨むことが大切です。質問内容にも配慮が必要です。特に人の不幸やネガティブな内容の項目を占うことはご法度になりますので注意しましょう。また、同じ項目や質問を二度占ってはならないというルールもあります。望み通りの結果が出なかったとしてもその結果を受け入れ、示されたアドバイスを活用しましょう。
周易の魅力とは
周易占いには難解な点もありますが、自然の法則などを取り入れて体系化した奥の深い占いといえます。相談事の答えをはっきり示してくれるのも心強いですね。明確な答えがほしいときや迷いがある際はぜひ周易を活用してみてください。